さいていじょうけん


 『F・LEAGUE』も残り2節。
 町田の現在の順位は4位。一方、今節対戦する大阪は6位。両チームとも尻上がりに調子を上げているチームで終盤に差し掛かり、着実に順位を上げてきている。
 町田は前節で浦安に3−8と大差で敗れはしたものの内容的には悪くはない試合展開で、バイアーノの意識がチームに浸透していたのが充分に伺えた。前節浦安に敗れたため、町田が掲げる“最低ライン”の『3位入賞』への道のりは、現在3位の神戸との勝点差は6のため、神戸が今節、名古屋に引き分け以上でその道は途絶えてしまう。最終節での直接対戦に備え、町田に求められる結果はただひとつ“勝利”だ。
 一方の大阪も負けられない。
 昨日、ひとつ上の順位に位置する大分が敗れたため、大分との勝点差は1のまま。今節町田に勝利すると6位に浮上する。
 チームの監督もシーズン途中からアドリアーノが就任し、自分達のフットサルを、シーズン遅まきながら見出し、それが結果になって現れている。ここ5試合の結果は3勝2分、その2分けは3位神戸と2位浦安から獲ったもので非常にかちが高く、3勝の内の1勝は当時3位の湘南から無失点で奪ったものだ。
 ここから推測するにディフェンスの大阪とオフェンスの町田と見るのが妥当だろう。
 試合開始のホイッスルが会場に鳴り響く。
 前節の浦安戦同様、前からプレスを掛ける町田。バイアーノ直伝ピヴォパラードはこの日も健在だ。非常に立ち上がりから良い状態の町田。勝たなければならないこのゲームでの気負いはない様にも見えた。
 試合開始早々、チャンスを多く演出していたのは町田。
 しかし、それも4分までだった。
 開始から4分が経過すると、流れは一変する。町田の前からのプレスを早いワン・ツーでかわし、数的優位の場面を作られる展開。大阪はディフェンスからの切り替えが非常に速く、前節、前々節と町田が大勝したチームの面影はどこにもなかった。ハーフコートから集中したディフェンスに町田は完全に攻めあぐねの状況が続き、この勝たなければならないゲームで結果的にチャンスを多く演出したのは、大阪だった。
 ハーフコートから始まるディフェンスからの攻守の切り替えの速さはどこかで見覚えがある。
 そうだ。浦安だ。
 前節対戦した浦安と似て非なるこの大阪。仮想浦安として、このゲームに集中しよう。
 前半が終了し、神戸と名古屋のゲームは2−2
 名古屋が2点先制するものの神戸が取り返し、同点で後半をむかえる展開となっていた。
 別会場で同時刻で行われている名古屋対神戸のゲームは気になるところだが町田がやらなければならないことはひとつだけ。
 このチームに勝つことだ。
 後半が開始される。
 前半同様、前からのプレスをメインに掛ける町田とハーフメインでディフェンスをしいていた大阪。
 このゲームの鍵となったのはやはり、攻守の切り替えだった。
 後半開始早々、ハーフライン付近で甲斐修侍がボールを奪うとドリブルで相手コートへ持ち込む。
 相手DFは3人。
 町田はボールを持つ甲斐と左サイドに開いた相根。甲斐がレフティ独特のリズムでボールをキープする。
 左へポジションを取り、ウェーブをかけて甲斐のパスを待つ相根。その相根に気をとられた中央と右に位置する2人の大阪DFに出来た隙を甲斐は見逃さなかった。
 左足でボールをなめて左足でシュート。
 独特のリズムから繰り出されたドリブルからのシュートは大阪ゴールのネットを激しく揺らした。
 甲斐修侍と相根澄の元祖カスカヴェウコンビがこの大一番で光り輝いた。
 後半10分。大阪が早い段階でパワープレーを敢行する。
 やはり町田同様負けられない大阪。
 この日、会場に駆けつけた観客は2,801人。
 これで大阪は観客総動員数は町田を抜きリーグ1位を記録した。
 パワープレーは心臓に悪い。
 敢行しても、敢行されてもパワープレーは心臓に悪い。
 しかし、この日の町田は集中していた。
 大阪のパワープレーに対して深く、鋭くボールを睨む。
 とりどころとみると一人が片方を切り、もう一人がボランチをかける。
 大阪に絶対的なチャンスを作らせない。
 大阪のシュートパスが入っても体を張って石渡が守ってくれる。そんな安心感があった。
 凌いで、凌いで、凌いで。
 ピンチを凌いで生まれたのはほんのわずかな隙だった。大阪が前のめりになり、不用意に打ったシュートをカットして、受けたのはジャッピ。
 コートの一番深い位置からの狙いすましたロングシュートは大きく弧を描き大阪ゴールのポストをかすめゴールに吸い込まれた。
 あのゴール。
 最後にポストに当たりネットを揺らしたこのゴール。
 ジャッピの気持ちが、チームの気持ちが、そして、サポーターの気持ちを乗せていたのだろう。
 ポストに当たった先なんて誰にもわからない。
 ただ、このゴールに関しては、長い滞空時間とパワープレー凌ぎきった苦しい時間帯。そして、絶対に勝たなければ道が開かれないこのゲーム。
 町田の気持ちが勝った瞬間なのだと信じたい。
 きっとそうだろう。
 堪らずタイムアウトを宣告したアドリアーノ。
 そして、ベンチに戻り、抱き合う町田スタッフ。
 残り時間9分。大阪はまだ、パワープレーを敢行。前回の神戸相手には0−4から5点を奪い返したほどの強い精神力を持つこのチームに勝つためにはそれ以上の精神力で相手に挑むしかなかった。
 その気持ちがさらに形になってあらわれる。
 レオが相手のボールを奪うと右足でなめて左足で素早くシュート。マルキーニョスが神戸戦で3得点したため同率1位となる20点目を挙げる。
 こうなったら町田は止まらない。続く35分にはユウキの積極的なシュートが相手DFのオウンゴールを誘い4−0。試合を決定づけた。
 今まで以上に勝たなければならなかったこのゲームで手にした勝利。
 浦安戦で実践したかったフットサルがこれなのだろう。
 フットサルという競技は本当に面白い競技だ。
 ゲームの流れがこれだけ如実に表れる競技が他にあるだろうか?
 このゲーム、一歩間違えれば軍配は大阪にあがっていた程紙一重の内容のげーむだった。
 そのゲームを拾えたことは今後大きなプラス材料となっていくだろう。
 今日のゲームでつくづく感じた。負けるゲームでは得るものは少ないのだろう。
 今日のようなゲームを勝つことによってそれは自信にも繋がり、我々の明日への活力となっていくのだと。