
きずはこせいにかわる
18節の対戦相手は『バサジィ大分』。
今シーズン初となるアウェー2連戦。選手達の疲れが非常に心配だ。シーズンも終盤に差し掛かり、残すゲームは大分戦を含めて後4つ。バイアーノが掲げる3位入賞を果たすためにはどうしても負けられない1戦となる。
チーム状態も徐々に上がってきており、ここ最近の5試合での平均得点は4点強。総得点こそオーシャンズに1点抜かれはしたが、まだまだ逆転可能な数字だ。
前回、大量得点で勝利している対戦相手なだけに、期待をせずにはいられなかった。
しかし、試合が始まるとそれが、慢心だったと気付く。
負けられない町田だったが、大分も負けられないゲーム。町田の1つ下の6位に位置する大分は町田に勝てば、一気に勝点を縮めるチャンス。町田同様、上を目指しているチームなら必ず勝点3を取りにくるのは当然。
明らかな私の慢心だった。
その慢心は、言い知れぬ痛みとなって、胸を締め付け始める。早い段階で先制点を奪われる。負けられない大分の激しいプレスに少々戸惑いの色を隠せない町田。大分の執拗なチェックにパスミスが目立つ展開になってきた。
前回、前々回と、大量得点で勝利したチームの面影はそこにはなかった。
しかし、アラタが魅せる。
1-1に追いつくと、これまで、町田の攻撃をこらえた大分の“代償”は早い段階で町田に対して有利な状況を作り出す。
8分と早い段階で得た第2PKをレオが落ち着いて蹴りこみ2-1。早々に逆転に成功した。
この段階で、ダメ押しすることができていたらもう少し楽な展開にすることが出来ていただろう。
いや、これから始まるこの終盤の戦いでは楽な試合なんて一つもないのかもしれない。
レオの逆転ゴール後からハーフタイムまでの12分間、幾度となく訪れたチャンスを決めきれず、2−1のまま試合が終了してしまう。
実際、町田にも危ない場面はあったものの、多くチャンスを演出していたのは明らかに町田だっただけに、この12分間はものすごく痛い時間帯だった。
ハーフタイムが終了し、後半が開始される。
後半早々、町田は前からのプレスで大分を追い詰める。
それとは違い大分は、前半より少し引いて守りカウンター主体の戦術を選択してきた。
クリアランスは速く遠くへ。
チーム内の決まり事がはっきりとしていた。
仁部屋にクリアランスを合わせ、振り向きざまにゴールを奪われる。
そこから怒涛のゴールラッシュが始まる。5分間で一気に3点。
2-4とされてしまった。
点の取り合いは町田としては“望むところ”なのだが、正直子の展開は予想していなかっただけに、不安を抱かずにはいられなかった。
時間が刻一刻と過ぎていく。
すると、32分、35分とアラタ自身シーズン初となるハットトリックを達成。前節のユウキのハットトリックの後をアラタが追うと、その数十秒後にジャッピがゴール、得点ランキング暫定ながら2位に並ぶゴールは待望の逆転弾。この日2度目のリードを奪う。
町田の攻撃はまだまだ、終わらない。第2PKのチャンスにレオが汚名返上。先程のミスを自らのキックで取り返した。
これで6−4。
その後、パワープレーを敢行する大分だったが、町田のディフェンスは冷静に、時に激しく対応し、チャンスを作らせない。
試合はまさにフットサルの醍醐味ともいえる得点シーンを多く演出し、町田の勝利という形で幕を閉じた。
この一戦で私は確信した。
町田は強くなった。
前節の花巻戦でもそうだったが、悪いなら悪いなりに彼らは戦う術を見出すことが出来る。
それは、“強さ”だ。
傷を追うことは、生きているのなら当然のことだ。
人はその傷を治す過程でこそ真価が問われ、そして、その傷が癒えたとき、それは何者にも変えがたい“個性”となるのだと町田の試合を観ていて痛感した。
この“傷”。
町田に例えるなら、“挫折”という言葉が正しいのかもしれない。シーズン序盤から3連敗を味わい、どん底に落とされる。
神戸に2度目の敗戦を喫したのは皮肉にもホームゲーム。
これ以上ない、屈辱的なゲームだった。
あの時は悔しくて涙が出た。
シーズン序盤の3連敗後の湘南戦は熱くなった。
あの時は嬉しくて涙が出た。
彼らはこのシーズンで“挫折”を味わった。
そして今、その挫折という名の“傷”は“個性”に変わり始めている。傷が癒え、それが個性に変わるとき。それは彼らが化けるということ。その瞬間をこの目に収めたい。
収めることができたらどんなに幸せだろうか。
これから始まるであろう全ての事柄は、全てが歴史的な瞬間であって、その1ページ、1ページをしっかりと胸に刻みたい。
人間でもチームでもそれは全て同じことなのだろう。
チームの成長に必要なのは正しい挫折と、正しい立ち直りなのだろう。
このチームは大丈夫だ。
バイアーノがいる。甲斐修侍がいる。アラタがユウキが相根が、滝田がレオが。そして、若い世代の活躍はやっぱり胸が躍る。
このチームは大丈夫。
強くなる。もっともっと強くなるだろう。
そのために必要なことを全て持っているのだから。
これまでに負った傷は多くあるが、それを乗り越え、個性へと変わるまで見守り続けたい。